企業にとっての新時代。そこでは、エンドユーザーのデジタル体験を担う部門が新たな現実に直面します。少し前までの環境はユーザーとアプリがあらかじめ決められた物理的な場所に配置されており、ほぼ静的で制御も可能でした。しかし今や、これまで以上にデジタル化された動的な分散型オフィスのエコシステムに移行しており、可視性、制御、パフォーマンスを損なうことなく、組織のインフラを常に進化させることが求められています。
柔軟性の時代がもたらす複雑さとは?
多くの企業にとって、リモートワークはもはや特別なことではありません。深刻な人材不足とも相まって、競争力維持のために新しい働き方に適応することが求められています。従業員の働き方と働く場所が変化しているため、インフラ・オペレーション(I&O)のリーダーはワークプレイスを再考し、テレワークとオフィス勤務の両方のメリットを活かす必要があります。ハイブリッドワークのアプローチは柔軟性が高く、採用競争力の維持、モラルや生産性の向上、不動産などの間接費の削減といった数多くの利点があることを考えれば、それを推進しない手はありません。
この新たな現実の中で、IT 部門ひいては組織全体によるデジタル経済での競争を大きく左右するのがクラウドとインターネットのインフラです。クラウドは、企業の成功に欠かせない柔軟性と拡張性を提供します。パブリッククラウド インフラ上では、既存アプリケーションの移行や、新しいアプリケーションの構築がすでに始まっています。さらに Webex by Cisco や Microsoft Teams などのコラボレーションアプリをはじめ、Software as a Service(SaaS)も広まっています。その理由は明らかです。顧客と従業員は、常に利用可能で使いやすいデジタル体験を期待しているのです。
SaaS は新しいアプリケーションスタックです。また、最近のアプリケーションは API やマイクロサービスを通じて複数のソースからサードパーティーの機能を取り込んでいるため、もはやモノリシックではありません。また、IoT(Internet of Things)が私たちの生活や産業に与える影響は大きくなるにつれて、人ではなくマシンがエンタープライズ ネットワークに接続する頻度が高まっています。今や「ユーザー」の定義とは、自律的に機能し、人間が追いつけないほどの規模と速度で意思決定を下せる、ますます賢くなったマシンを包含するまでに広がっているのです。マシン、自動化、マイクロサービスの利用拡大に従い、人間とコンピュータの関わり方という点で次の時代も見据えたネットワークを再構築する必要があります。これは、成功のための IT スタッフの配置、戦略的な運用管理だけでなく、チームを支えるデジタルエコシステムの監視やトラブルシューティングの方法にも長期的な影響を及ぼします。
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インターネットを可視化し、不透明な SaaS にデータとコンテキストで備える
この新たな現実に直面した今、企業はオンプレミスとパブリッククラウドの両方で、インフラとアプリケーションスタックを進化させる必要があります。競争力維持のためには、SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)などの新しいテクノロジーを採用し、デジタルサービスの提供方法を変更することが求められています。SD-WAN は、インターネットに直接依存することでネットワーク配信を変化させますが、これは環境に複雑さをもたらす可能性があります。
しかし、SD-WAN の仕組みを理解することと、それを導入することは別のことです。さらに、セキュア アクセス サービスエッジ(SASE)やセキュア サービス エッジ(SSE)などのセキュリティアプローチは、IT アーキテクチャに関する IT 部門の長期戦略を左右することがよくあります。SASE や SSE によるインターネット、クラウド、ネットワークの各環境連携のレベルは、 セキュリティベンダーのアプローチによって変化するからです。より広い SASE アーキテクチャを最終目標として SD-WAN の導入に取り組んでいるお客様もいます。SSE はネットワークから分離されているという性質上、クラウドとインターネットにより重点を置いています。それに対し SASE はよりネットワーク中心のアプローチであるため、オンライン接続に大きく影響されます。SASE と SSE のどちらも、複雑で変化し続ける環境で大規模な運用を行うため、顧客がどのオプションを選択するにしても、関連するすべてのオンラインコンポーネントの復元力と一貫性を確保する体系的なデジタル体験モニタリングが重要です。
インターネットがネットワークになった今、IT 部門 はこれまでとは異なるアプローチ、つまりエコシステム管理のアプローチを必要としています。この分野における変革の緊急性は十分に認められていますが、I&O リーダーが注意すべきなのは、インターネットベースのサービスにはマネージド サービス プロバイダーが提供するような保証やサービスレベル契約(SLA)が付随しない点です。前者の導入を考えている場合、導入前、導入中、導入後のパフォーマンスをベンチマーク化し、変更がユーザ体験にプラスの影響を与えていることを確認する必要があります。これにはデジタルの可視化が不可欠です。そうでなければ、デジタルサービスの運営に依存せざるを得ないサードパーティ プラットフォームについて、ドメインレベルでのインサイトが得られないからです。不透明な部分を少しでも残せば、サードパーティプロバイダー側で問題が発生した場合に相手側からのもっともらしい反証を可能にします。さらに深刻なのは、問題を指摘して現状のコンテキストをリアルタイムで共有できる機会を失うことです。インサイトをプロバイダーと共有できない状況は、パフォーマンス問題解決に向けた生産的な協議の妨げにもなります。
ハイブリッドワークや分散型ユーザーへの対応の重要性が高まる中、家庭用ブロードバンド接続や Wi-Fi パフォーマンスなど異なる環境を考慮したまったく新しいアプローチが必要です。多くの人にとって、今や家が新しいオフィスとなっているからです。このような状況に配慮して拡張ネットワークのアーキテクチャと管理に可能な限りの復元力を持たせることで、ビジネスクリティカルなコラボレーションや生産性向上アプリケーションに全員がスムーズに接続、実行できる環境が整います。
つまり、デジタル体験の「ラストマイル」は、質の高いエンドユーザー体験を保証する上で特に注意が必要です。ISP、CDN、CASB、クラウドプラットフォーム、SaaS プロバイダー、Wi-Fi、VPN など、複雑の不確定要素の中のいずれかがデジタルチェーンの弱点となり、ユーザー(または顧客)体験を台無しにする恐れがあるからです。先に述べたように、プロバイダーは企業の外側にあるインフラとサービスコンポーネントの多くを制御しています。必然的に、パフォーマンスのベンチマーク化、アーキテクチャの微調整、サードパーティプロバイダーのインフラとサービスのパフォーマンスに対する責任の明確化が必要なのです。
古い技術やツールでは対応不可能
しかし、現実には多くの企業がこの変化のペースについていけずにいます。インターネットに依存する新しい時代の要求に応えようとしながらも、新しいクラウドファーストのパラダイムにもはや対応できないツールを使って可視性と直接制御を犠牲にしているのです。従来の監視ツールやトラブルシューティングツールをハイブリッドなマルチクラウドの環境に応用することは不可能で、サービス提供チームやサイトリライアビリティ チームからエンドユーザーまで、関係者全員の妨げになります。しかも従来の監視アプローチでは、IT 部門は問題のトラブルシューティングを確実かつ具体的に行うことができません。なぜなら従来のアプリケーションやネットワーク監視ツールが、コードインジェクションやパケットキャプチャベースの監視技術(PCAP/Flow など)を使用しているためです。これらの技術は、アプリケーションや基盤となるインフラの所有権または制御権(インストルメンテーション)を前提としますが、いずれも SaaS 環境では成り立たないからです。監視ソリューションにはデジタル サプライチェーン全体の依存関係の特定を必要とし、その実現にはアクティブモニタリングのアプローチが不可欠です。
クラウドがデータセンターになった今、問題発生時に企業はインフラを即座に可視化する必要があります。エンドツーエンドの環境を完全に把握しておけば、IT 部門は問題の根本原因を迅速に特定しサービスを復旧させることができます。
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インターネットとクラウドの可視化:生産性と収益を保護し優れた体験を実現
上記の課題に対処するにはインフラのアップデートが必須ですが、その際に可視性、制御性、パフォーマンスを犠牲にすることは避ける必要があります。その鍵はデジタル体験をエンドツーエンドで可視化することにあります。ネットワーク内の重要なトランザクション、ユーザー、ビジネスクリティカルなアプリケーションを常に監視すれば、あらゆる曲面で顧客と従業員に優れたデジタル体験を提供できるのです。デジタルエコシステムで起きていることを完全に可視化することで、各インタラクションの信頼性と迅速さを確保し、ユーザー満足度を高め、ビジネス成果を向上できます。
トップクラスのデジタルエクスペリエンスモニタリング(DEM)プラットフォームであ ThousandEyes は、WAN からインターネット、クラウドに至るまで、エンドツーエンドで全面的に可視化します。製品のCloud Agentsは ISP や主要なパブリッククラウドプロバイダー全体にあらかじめ展開されており、さらに企業ネットワーク内には Enterprise Agents、ユーザーのデスクトップやラップトップには Endpoint Agent が配置。これらの監視ポイントからのデータを関連付けることで、問題の根本原因を明確に伝える使いやすいスナップショットを提供し、インターネット、ネットワーク、アプリケーションの各レイヤーの一元的かつシームレスな把握を可能にします。ThousandEyes が誇る情報能力は、パフォーマンスの保護と向上だけでなく、ひいては生産性と企業収益の確保にも貢献します。
最新アプリケーションの構築で前提となるのは、最新のアプリケーション体験が最適化されていること、およびマイクロサービスが効果的にコミュニケーションを取れることです。包括的なインターネット モニタリング データセットを備えた ThousandEyes ならば、クラウドおよびインターネット主導型の環境でアプリケーション パフォーマンスに影響を与えるデジタル依存関係を、業界最高水準の緻密さで分析できます。
不確実性:今や対処可能
YMCA of the North(旧 YMCA of the Greater Twin Cities)の情報技術担当シニアバイスプレジデントの Tom Case 氏は、クラウドの可視化と SaaS の信頼性向上という面で ThousandEyes の強力さを実感しています。「ThousandEyes によって Microsoft のクラウドを可視化できるようになったため、SharePoint インスタンスに問題が発生した場合、その問題が Microsoft 側にあるかどうかを確認できるようになりました」と同氏は述べています。
さらに、「以前は従業員がよく使う音声通信ネットワークや CRM、人事ツールにかなりの障害が発生して混乱を極めており、当然ながら生産性も低下していました」と述べています。しかし ThousandEyes 導入によってすべてが解決しました。従業員の満足度を高め、青少年を育成するという本来の業務に集中することが可能になったのです。
McGraw-Hill 社も、複雑なインターネットを可視化できる ThousandEyes によりデジタル体験で成功を収めた一社です。出版とソフトウェアの企業である同社は、ThousandEyes から得られる可視性があるからこそ組織全体のデジタル トランスフォーメーションへの取り組みに安心して取り組めています。
McGraw-Hill 社のグローバルネットワークサービス担当シニアディレクターである David Mann 氏は、「社内ではエコシステムを構築しており、ネットワークの可視化を求める声が各部門から上がっていました。ThousandEyes のダッシュボードやツールは全部門がアクセス可能になっており、包括的な可視化が実現しました」と述べています。
ThousandEyes のダッシュボードを使えば、 McGraw-Hill 社の社内ネットワークに接続していないチームでも、ネットワークオペレーターを介さずにアプリケーションのパフォーマンスの監視と問題の診断ができます。
Mann 氏によれば「NOC(ネットワーク オペレーション センター)をクラウドソーシングしているようなものです。少しのトレーニングを受ければ、あとは自分たちで運用して結果を見ることができます」。
高価なバーチャル NOC シナリオは過去の話
変化の複雑性、ペース、範囲の増大は、企業にとって新たな現実を突きつけています。絶え間なく進化するマシン主導型の環境で、インターネットとクラウド環境も猛烈なスピードと規模でシフトを繰り返しており、戦略的には「ディフェンス」ではなく「オフェンス」が必要なことを意味しています。そのため、起きている状況にただ反応するのではなく、デジタルエコシステム内の潜在的な弱点に正面から取り組むことが極めて重要なのです。そうすることで、アカウンタビリティとパフォーマンスの足並みをそろえてデジタルの運命を自らの手で切り開けるのです。さらに、アプリケーションとサービスのパフォーマンス問題を段階的に事後対応するのではなく、プロアクティブかつ意図的に強化して加速させることができます。
ThousandEyes は、問題の原因となっているドメインのコンテキストを提供し、パフォーマンスを維持できるようサポートします。お客様からは、ThousandEyes とパスの可視化機能のおかげで、SaaS ベンダーのパフォーマンスについてベンダーの社内 IT 部門よりも詳しくなれたとの声が多く寄せられています。
運用について共通認識を持つことで、ドメイン問題の可視化、責任の明確化、オンラインのエコシステムの理解が可能になります。さらに、プロバイダーが自社のインフラ内で問題を解決できるようになるため、お客様は一貫した体験とパフォーマンスを確保できます。そしてこれらのインサイトにより、問題解決に向けた社内外のチームとのコラボレーションが効率化し、平均特定時間(MTTI)が数時間から数分へと大幅に短縮されます。ThousandEyes により高価なウォールームは過去のものになり、最前線で働く人々の効率化と、顧客や従業員が期待する質の高いデジタル体験の提供が可能になります。
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